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【「ウォーキングデッド」シリーズ=クリエーターの苦悩。血を吐き続けながら作り続けるシリーズものの過酷?】 [映画業界物語]

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【「ウォーキングデッド」シリーズ=クリエーターの苦悩。血を吐き続けながら作り続けるシリーズものの過酷?】




シーズン8を観て一番感じたのは、脚本家たちの苦悩だ。現在、アメリカで放送中のシーズン9。第1話の視聴率がかなり悪かったという。その理由も分かる気がした。

僕も脚本を書く仕事をしているので分かるが、1本のドキドキハラハラ物語を書くだけでも大変。それがヒットしたからと、続編。さらにシリーズ化というのは本当に戦いだ。いい例が「007」シリーズ。未だに続いてはいるが、途中からかなり酷いものが増えた。現在は過去のリメイクのような展開で、スペクターやブロフェイルドを復活させた焼き直し企画。

「インディジョーンズ」シリーズも、3作目からクオリティがかなり落ちた。だが、一度人気が出ると1作目より面白くなくても客は来る。儲かれば映画会社は製作を続ける。落ち目になり興行収入がヤバくなるまで続ける。それで大変なのは監督より、脚本家だ。別のシナリオを書くより、シリーズの2作目、3作目を書く方が大変なのだ。その辺を解説する。

例えば「007」なら、こんな決りがある。主人公はスパイ。敵は国際的な秘密組織(或は某国の情報部)、その組織による巨大な陰謀。それを阻止するために主人公は世界を駆け回る。最後に組織を倒しハッピーエンド。このルールの中で物語を作らなければならない。初期はスペクターという秘密組織との戦いだった。宇宙船が強奪されたり、原子爆弾が奪われたり、それらで世界が危機に陥り、ボンドが阻止する。

シリーズを追うごとに、毎回同じ話になり、アクションが違うだけのストーリーになってくる。といって、宇宙人が襲来。ボンドが戦うというのはダメ。それでは「007」でなくなる。悪霊と戦うもダメ。大怪獣出現もダメ。敵はリアルで現実に近い設定でなければならない。相棒が出来て「リーサルウエポン」みたいな展開? それもダメ。相棒は美女というのが「007」だ。

こうして同じような展開しかできず、製作者も困り、現在は先に書いたように過去のリメイクのようにスペクターが登場。ブロフェイルドがボンドの兄だったいう設定で進めている。これはもう製作サイドが「ネタ切れです!」と降参しているような状態。同じように、どのシリーズにも定義があり、それを破ると、そのシリーズではなくなってしまう。

面白いアイディアはたいてい初期の頃に出尽くしてしまう。なのにヒットすると「もっと作れ」「面白いのを書け」と脚本家は厳しい戦いを続けることになる。特にテレビシリーズは大変だ。「ヒーローズ」もネタ切れでシーズン3で終了したようだ。新シリーズも出来たが、ほんと酷い出来で、新しいアイディアが出て来なかったことを痛感する。

さて、「ウォーキングデッド」だ。このシリーズの定義をおさらいしよう。まず、ゾンビが増え続ける世界。ゾンビの定義はジョージAロメロが作った映画の通り。その世界で放浪するリック(主人公)たち。というのが設定。

初期は安住の地。或は事態を解決するための場所を探して旅する。が、ゾンビが行く手を阻むという物語だった。が、それを繰り返すと飽きられてしまう。そのあとは、ある場所にたどり着き、そこでの葛藤と戦いがメインになる。

最初が「ガバナー(総督)」篇(僕が勝手にそう呼んでいる)、次が「ターミナル」篇。そして「刑務所」篇、そして「ニーガン篇」細かくいうと、その間の物語もあるが、「放浪篇」を止めて、ある場所に滞在する展開に移行した。そしてゾンビVS人間ではなく、人間VS人間とドラマ内容も変化する。最初が「ガバナー」篇。総督と呼ばれる男の物語だ。一見、親切で、豊かな町。しかし、という謎解きに始まり、やがてリックたちとの対決。そこまでの流れとは違う展開で興味を惹いた。

が、そのあと「刑務所」篇。リックたちは彷徨うのではなく、誰かの町に滞在するのではなく、自分たちで町を作るという話になる。これは新しい。その中での人間模様。外部のグループの襲撃。今までとは違う展開だ。「ウォーキングデッド」シリーズも「007」と同じく、定義を外れて、ゾンビ以外に恐竜が出現とか、宇宙人の襲来、悪霊が襲って来るというのはアウト。あくまでもゾンビの町での人間ドラマでないといけない。


この頃は1シーズンで、基本1つの物語で進んでいる。2シーズン続けると飽きられるのと、個々のエピソードを考えるのが大変。クオリティが落ちるからだ。「刑務所」篇が終わり、再び放ろうするリックたち、そして「ターミナル」篇。

これも最初は「食料のある、危険のない安心な場所」=ターミナルと呼ばれる場所を求めてリックたちはそこに辿りつくのだが...という展開。「ガバナー」篇と構図が全く一緒。

「えーーまた繰り返しかあ?」

と思っていたら、あっと言う間に終わってしまった。やはり評判が悪かったからではないか? シリーズというのは、定義を守りながらも、新しい展開をしないと観客(視聴者)は退屈する。だが、次第にネタはなくなって行く。

ここで確か、アレクサンドリアかヒルトップの町が登場したと思う。あれこれ揉めるが、パッとしない。次のシーズンが「ニーガン」篇がスタート。盛り上がる。

ただ、「ニーガン」篇も「ガバナー」篇の焼き直しではある。紳士的だった提督をバットを持った残虐なニーガンに置き換え、あの町を「聖地」にして、組織化されたニーガングループに進化させたのだろう。

これは「ターミナル」篇と同じ手法。そのターミナル篇が今イチなのに、ニーガン篇が盛り上がった理由は、まず、ニーガンという強烈なキャラクター。単なる悪辣なボスではなく、知的な部分もあり、政治家的なところもあり、これまでになかったタイプの悪役だったこと。

それを演じる俳優=非常に力があったことが上げられる。それだけではない。ここで脚本家が奮闘した「ターミナル篇」で盛り上がらず、この先シリーズをどうすればいいか? すでにいろんなアイディアを出し尽くして、相当に悩んでいたと思える。僕が当事者なら食なくし、寝られなくなり、心も体もボロボロになっていたと思える。しかし、彼らは新しい展開が思いつかず、「ガバナー」「ターミナル」の延長で行くことにした。

シリーズのパターンは敵が次第に強大に成って行くというもの。犯罪者が敵、秘密組織が敵、国家情報部が敵のように、手強く、デカい存在になることで、「えーー勝てるのかなあ」と観る者が心配になる。それを見事に勝利するというドラマを作り出すのが脚本家の仕事。シーズン7で登場したニーガンはタフで、クレバー、そして何百人もの子分を率いるボス。これまでの誰より強大な存在。

だが、先の「次第に強大なになる敵」パターンも基本は同じ繰り返し、結局、同じ展開で勝利する。脚本家は考えただろう。「下手したら、ターミナル篇と同じに盛り上がらないかもしれない」そこで俳優の力に期待するだけでなく、ニーガンをとんでもない奴に仕立てることを考えつく。それは同時に、低迷していたシリーズを盛り上げ、視聴者にあっと言わせること。

それがシーズン1からのメインキャラクターの1人を殺すこと。ニーガンに惨殺させることだった。それもシーズン6の最終話で! 誰が死んだから分からないようにして、次のシーズン7に持って行く。その作戦は見事に当たり、話題になった。

が、ここからも僕の推理だが、シーズン7を進めながらも不安が強かった。いくつものように1シーズンでひとつの話を完結させると、次のシーズンにもっと面白い話を作らねばならない。もう限界だ!

しかし、製作会社は視聴率が取れる限りシリーズを製作し続ける。そこでクリエーターたちは考えた。時間稼ぎをしよう。それでのように「ニーガン」篇を1シーズンで終わらせず、次のシーズンまで続けたのだ。そのために、シーズン7と8には無意味なエピソードがいくつもある。

「その話なくてもいいんじゃない?」

というものが多い。ただ、ニーガンのキャラクターは強く、視聴者は「こいつだけは許せない!」という思い、「リックに逆襲してほしい。ニーガンを殺せ!」という願いがあるので、皆観てしまったのだ。

ただ、ニーガンのキャラが強烈なのと、なかなか逆襲できないリックたちの気持ちに共感する視聴者は、暗い思いを引きずり続け、「ウォーキングデッド」を見ることに疲れて来たのではないか? それは製作側も感じていた。

「いつまでもニーガン篇を続けられない。何かまた驚きがないと!」

ということで、これまたシーズン1からのレギュラーである、あのキャラを死なせることにした。確かに悲しいエピソードだったが、どうも無理矢理感があった。「太陽にほえろ」でレギュラーの刑事が殉職すると視聴率が上がることで、1年ごとに殉職のエピソードを作っていたのを思い出す。中学、高校の頃だが、

「Gパン刑事が死ぬ?」

と聞いて真剣にテレビを見たが、次第に「また、死ぬの?」になり、テキサス刑事以降の殉職エピソードは見てない。それでも視聴率は取れたようだった。同じように「WD」でも、そんな手法で観る者を引きつけようとしている。

2シーズン続いた「ニーガン篇」がシーズン8で終わった。例によって今後の展開を思わす描写があった。が、今イチ、興味を惹かない。

「えーーそんなー」

というほどのものではない。が、もう「WD」の定義では限界なのだろう。それでシーズン9の視聴率がシリーズ中、2番目に最低だった。だが、努力の問題ではなく、脚本家の限界。こうしてシリーズというのは終了するものなのだ。新シーズンではまた、レギュラーの1人が死ぬと聞く。やはり、ネタがないのだ。

とは言え、僕個人はこのシリーズが大好きで、DVDになると全話レンタルして1日で見てしまう。12時間連続で見ている。が、脚本の仕事をするものとして、本当に過酷な思いで、血を吐きながら走り続けていることも強く強く感じる。



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