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オーディションで実力ある新人を見抜く方法? [映画業界物語]

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オーディションで実力ある新人を見抜く方法?

映画監督というと「俳優に演技指導する仕事」と思われがちだが、それは違う。伊丹十三監督のように元俳優なら演技の指導もできるだろうが、ほとんどの監督は演技をしたことなんてない。そんな人が偉そうにプロの俳優に指導なんてできる訳がない。せいぜい

「もっと激しくやって?」

「静かに台詞を言って欲しい」

というイメージを伝えるくらいなものだ。監督業の一番大事な仕事の一つはキャスティングだ。有名俳優なら実績があるし、過去の作品をDVDで見れば芝居のレベルも分かる。だが、新人が難しい。オーディションに呼んで面接をするのだが、会場を使える時間、費用もあって、延々とできる訳ではない。往々にして、5人で25分とかいうこともある。

1人5分だ。自己紹介2分、質問1分。本読み(シナリオの台詞部分を読んでもらう)が2分。それで終わりだ。そんな時間でその若手がどれだけの実力があり、その役に相応しいかどうか?を見抜かなければならない。もし、外れても撮影現場で交代はできない。ダメだと分かっても、その人で撮影を続けなければならない。

しかし、短時間でも僕は結構、できる俳優を見抜き大正解であることが多い。僕の映画に出て、その後大ブレイクした何人もの若手女優もそんな形で選んだ子たちなのだ。「役者を見抜く才能がある?」イヤイヤ才能なんて存在しない。でも、コツがある。

ーーどんな俳優になりたいですか? 名前を挙げてください。

と質問する。多くが、その時代に活躍している俳優。特にテレビドラマで活躍している俳優、

「米倉涼子さんです」

という場合。大抵アウト。人気俳優に憧れて役者を目指そうと思ったというレベル。普通の子であることが多い。例えば

「大竹しのぶさんです」

ベテランを挙げた場合は、多少は芝居が分かっているが、即答した場合はまだ演劇ファンのレベルだ。ある程度、芝居をすれば大竹さんがどれだけ凄いか分かる。それを「大竹しのぶさんです!」なんて元気に言えるのは、まだまだ駆け出しだからだ。

本当の凄さが分かっていれば、簡単に名前なんか言えない。また、ベテラン女優の名前を上げることで「私は他の人と違うのよ。目標が高いの!」というアピールをしていることもある。それには要注意。その場合こう聞く

ーー大竹さんの映画、舞台は何を見ていますか? 

この質問で全作、あるいは20本以上を見ていたら真剣。だが、たいていは1ー2本。ある作品を見て

「感動した〜」「凄い女優だ!」

と思っただけ。もし、真剣に役者を目指すのなら「大竹さんの作品。若い頃から全部見たい!研究したい!」と思うはずだ。それをしないのは、憧れているだけだ。それでは役者になれない。

以上は全てアウト。とてもプロとして通用しない。俳優業以前に、その俳優に憧れているだけなのだ。ある時こんな答えをした10代の女の子がいた。

「吉永小百合さんです」

これもアピールか?と思ったが、そんな子ではない。憧れならオンタイムで観れる有名俳優を上げる。また、言葉に尊敬を感じる。憧れではない。気になり聞いた。なぜ、吉永さんか?

「以前に共演させて頂きました。本当に凄い女優さんで、芝居だけでなく。待ち時間もいろいろ教えられました」

実は彼女、子役時代に吉永さんの娘役をやったことがあったのだ。しかし、小学生の低学年頃。その年齢だと吉永小百合が凄い人だというのは知らない。にも関わらず、凄さを感じ取っていた。それは力があるということ。

「この子はいけるな!」

と思った通り、演技力もずば抜けていた。ただ、優秀過ぎて他の俳優が下手に見えるので、残念ながら採用しなかった。その後、彼女は主演を張る女優になった。

できる子は面接だけで分かる。憧れでは俳優になれない。憧れる俳優がいるなら、その人の映画は全部見ろ。それをしていないのはファンレベル。ファン意識ではプロにはなれない。数分の会話でもそれは分かる。ただ、この記事を読んでオーディションで実践してもダメ。僕以外の監督はまた別の物差しでキャストを選ぶからね!


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